君の瞳はなんてきれいな色をしているんだろう。 ぽおっ、とまつげの隙間から覗くミナキくんの瞳をみつめる。光をあびた宝石のようにきらきらと瞬くそれは、澄んだ水に若草を溶かし込んだような色で、北風の化身に触れられずとも清浄な輝きを常に湛えている。 不意に、肌に影を落としていた長いまつげが持ち上がり、美しい色が広がって僕を捉えた。彼の瞳に僕が映るその瞬間はいつだって、心の臓がどきどきとけたたましいくらい鳴ってしまう。ミナキくんは気づいている様子はないけれど、そろそろ耐性がついてほしいものだと思う。 「……なんだ、マツバ」 「うん?」 「私の顔をじろじろと見て」 なにかごみでも付いているのか? そう言って頬に、眉に、触れる所作までもがしなやかで、僕の心拍数はまた少し上がった。ううん、何も付いていないよ、と首を傾げると、そうか、と素直にその言葉を受け取ってまた手元の文献に視線を落とす彼。 君があんまりにも恰好いいから、とは言えない。言えたところで彼は僕が望む反応をしてくれるわけじゃない。けれど、こうしてミナキくんのそばにいて、彼が真剣に考えこむ姿や、時折力が抜けたようにふっと笑う顔をみていられるだけで、充分幸せだ。僕は君の「友人」で本当によかったと思っているんだよ。 防音壁の向こう側 (この声が永遠に届かなくても、君はそこにいる) |