冒険ノートを開き、旅に出てた日から今日までのできごとをあらためて思い返してみる。いろいろなことがあった、厄介事に巻き込まれたりもした。でも、パートナーのポケモンたちと過ごした時間は、どこを切り取っても輝いていたと思う。その中で、たびたびバトルを交えることになった彼のこと。旅に出るよりずっと前から、生まれたときから一緒だった、僕の幼なじみ。 明日は僕らが旅に出てから初めての、彼の大切な記念日だ。 いつものようにレポートに書き込んで、日付が変わる前に出発できるよう準備をしなければ。せっかちでじっとしていられない彼のことだ。はやくどこにいるか探し出さないと、明日中に腕の中に抱えたものを手渡せるかわからない。 ポケモンたち、特にこれから飛び回ることになるムクホークの健康状態をしっかりみてやり、きっと久しぶりに会っても彼は開口一番「バトルバトル!」なんだろうなあ、と思い頬を緩ませた。 「そうなったとしても、バトルは少しだけお預けだけどね。」 ゆっくり休んで、とポケモンたちをボールに戻す。彼らの出番はもうちょっと先の話。僕がジュンを見つけて、力いっぱい抱きしめて、プレゼントを渡した後。それからはお互いに全力でバトルしよう。きっと以前よりぐっと強くなっているだろうから、僕らも気を引き締めなくちゃ。 そうこう考えを巡らせているうちに、気づけば日付が変わる五分前。普段の就寝時間を大幅に過ぎ、まぶたが重いけれどそんなことには構っていられない。 「さあいこう、ムクホーク。」 猛禽のしっかりとした体躯につかまり、遠ざかる地上から目を離し広がる星空を仰いだ。ムクホークが高く一声鳴いて、滑るように夜の空気を切って飛ぶ。 みつけたとき、ジュンはまだ起きているかな。もし寝ていたとしたら、起きるまで傍にいよう。 誰よりも先に、彼に「誕生日おめでとう」の言葉を言うために。
夜を飛び越え |