「 」 名を呼ばれ、面を上げる。 普段穏やかな瞳をした少年は、ときたま何かにとりつかれたように、 幼い顔に狂気を孕ませる事があった。そういう時は大抵、そっとしていれば次の瞬間にはケロリといつもの顔に戻っていたりしたものだった。 だから俺は声を掛けられても、刺激しないように視線を返しただけ。 それが、導火線に火をつけたのか。 「……なんで、返事しないの。」 「え、あ、だって」 「僕が呼んだら返事してよ」 「ごめ 、ん」 「謝ればそれですむの」 「じゃあ」 どうすれば、と開きかけた口は、しかし開かなかった。普段どこにそんな力があるというのだ。 彼は俺の顎を掴みぎりぎりと力を込めている、尋常ではない強さで。 みしり、そんな音が聞こえた気がする。 思わず苦悶の表情を浮かべると、にこにこと平素の笑顔で彼が言った。 「食べちゃってもいいかな」 己の色素の薄い眼が拡がるのがわかった。 ええと、それはどういった意味で、なんてふざけている余裕すらない。 気が付けば、手持ち無沙汰になっていたオレの片手は、しっかりと握られていて逃れることができない。どちらにしても、 底冷えのするほど深い彼の漆黒から目を離せないのだ。恐怖に縛り付けられる。 最初から、抗うことなんて許されていない。 ぎらぎらと輝く幼なじみの瞳は、捕食者の様相をしていた。 「ずっとこのときを待ってたんだ。」 「優しく壊してあげるからね」 「ああ、」 あいしてる。 与えられた熱を、俺はただ素直に嚥下するしかなかった。 狼がお月さまたべた (心から君が好きだよ。こわしたくなるくらい)うちのDPt主♂は軽く二重人格 |