第一印象は、なんて眩しい人だろう、だった。 彼の街に降る陽射しのごとく輝く金髪や、青空と蒼海を溶かしたような双眸は、一日の大半を煤けた炭坑の中で過ごす僕には鮮やかすぎて目が眩んだ。 けれども、たまに会って話すうち、彼が存外に大雑把で怠惰な面をもつ人物だとわかった。それは、自分にコンプレックスを抱える僕にとっては、玉に瑕を見つけた気分で逆に愛おしかった。自分と彼とを対等に見ることが出来た気がした。 そして今、彼の総てを知り、手に入れて感じたのは、彼はやはり眩しい人であるということだ。彼はどんな恥辱にも屈しない。その心を傷つけられることなく、歪みを与えられることもない。ただ起こる事象として僕を受け止めた。 彼は自分の屈折した心を自覚している。更にその歪みを、自己の一部としてありのまま許容している。ゆえに彼は「眩しい」。自分の歪みを受け入れられずに、他人にぶつけた僕とは天と地ほどに差があるのだ。 先ほど手に入れた、と言ったけれど、実際に彼を手中にすることは永遠に出来ないのだろうと思う。 彼は自由で気儘な太陽だから。太陽に近付きすぎたイカロスは、翼を焦がされ地に堕ちた。きっと、そういうことなのだ。 しかしその太陽がこの腕の中にあるのもまた事実で、僕はそっと疲れ眠っている彼の瞼に唇付けを落とした。 眩しい人は手の届く範囲で光っていた、だからそれを手に入れようとした。しかし眩しい人に近付けば近付くほど、自分の汚れが照らされ露わになる。 彼が僕の手の届かないところにいればよかったのに、と独りごちながら、この腕にある体温が本物であることに安心を覚えていた。 痺れるような憧憬 (美しいものをこの手で汚したい) |